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流れ星でさえ落ちていくのだから。

「防弾ガラスもライフルの弾だけは防げないらしい」
木根くんのトリビアに
(だけじゃないでしょ、大砲の弾とかも防げないでしょ)
とか、返さなくなっただけでもおとなになったなあ、と思う。
どうでもいいことにどうでもいいことを考えずにいられないのは変わらないけど。
でもそういう手放せないことが個性とかいうんじゃないかな。
なんて、じゃあ爪を噛み続けたり鼻くそをほじり続けるのが
個性だとでもいうのかい。自信をもって履歴書に一筆したためたまえよ。
自分に突っ込んでどうするというのだろう。思考の迷子。
「へー、じゃあ幾ら防弾ガラスで守られていても、ライフルには気をつけないとね」
ボクは必殺、富士山高いメソッドでやり過ごす。
トリビアはボクの知らないものだったが、
この手合いにでかい顔をさせておくのは癪だ。
(富士山高いメソッドっていうのは、周知のことや当たり前のことで返事をするテクニックで、されると多分ムカつくよ/されたことないから分からないよ/というかボク以外使う人間を見たこと無いよ。ということはこのスキルはマトモな人間は使わないんだろうなあ、ぼくを)
あ、また迷ってる。


「わたし、そういうのすきだよ。グーで無理矢理パーに勝つみたいなの」
木根くんから仕入れた(押し付けられた)トリビアをはれるさんに横流しする。
返ってきたのは仕入れ値(ねえよ)を補って余りある、
価値ある返事オブセンスフル。
理想的な会話というのはこういうものなんだろうな、と思う。
相手の出した商品に釣り合う商品を、心の倉庫から選び出す。センスでもって。
相手と同じ商品をそのまま出したら喧嘩の合図だし、
(「おうこら」「おうこら」「やんのか」「やんのか」とかいうあれだよ)
(「誠心誠意お手伝いします!」「誠心誠意お手伝いしますw」的なのもあるな)
ボクの必殺富士山高いメソッドは、あえて無価値のものを押し付けるやつで、
喧嘩と受け取らない木根くんをはじめとするみんなは、大人だなあ。
ボクなら時間を返せとか言っちゃう。思っちゃうじゃなくて言っちゃう。
……こんなボクにかまってくれる木根くんにはれるさんにただ感謝。
…………まあ感謝の言葉は口にしないし伝えもしないのだけれど。
ああ、これだよなあ。これがボクのダメなところです。
でもかわいいところでもある気がしますね。誰かこんなボクいりません?
なんて、爪噛み鼻くそ案件。
思考の迷子。


「実際問題、グーの方が強いよね。ビンタより。ずっと疑問に思ってた。ずっとお城でも暮らしてた」
「威力問題なの?紙だの石だのの、性質の問題かと思ってた」
トークのうちにさらりとジャクスンの名作ホラーのタイトルを混ぜ込むボクのリリシズム―誤用―をするりとスルーして、はれるさんは独自の理論を披露する。
「そもそも、パーでグーに勝つって、常々疑問だったのね?油紙みたいな紙もあれば、ボール紙みたいな紙もある。包んだところで石に突き破られてしまうもの、硬すぎると石を包めるの?てか、包んだら勝ちってなに!?」
その通りだ。コンビニのおにぎりは、かれを包んでいるラップに負けているだろうか?
それなら「わーい、セブンのおにぎりが100円だー」とか言いながらラップを取って中身を捨てればいい。
「だよね。ボクらは服の奴隷ではないし、店の奴隷でもないよ!」
ボクを包む制服の胸をがばりと開き、ボクらを包むコンビニ―当店は埼玉県は越谷市、せんげん台駅前店―をぐるりと睥睨する。
客はもちろんいない。いたらこんなまねはできないし、そもそもボクは店員同士でぺちゃくちゃ話している店はキライだ。たぶんはれるさんもそうだ(と信じたい)。だから気が合うのではないか(そうだったらいいな)。
「包むほうが常にエライってもんじゃないよね。包まれてるほうにも気概はあるよ。制服よりわたしのほうがかわいいし、わたしはこのお店で働いてあげているという気分でつねにいるよ」
はれるさんは多分本当にそれを心から信じている。それ故にきれいなのだろうとボクは思う。
自信満々の人は、まるで人間ではないみたいに、たまに思う。
「でもそれ、結局油紙みたいな紙とかの話に戻ってるよね」
そういう存在をうぐうって顔にさせるのは本当に気持ちがいい。
ノリを重視した掛け合いを演じながら、
急に論理の話を持ち出し肘鉄を食らわせる!
ボクはこれで何人ものひとを遠ざけてきた!
はれるさんよ、遠ざからないでおくれよ!
……なんて思うなら、しなければいいのにね。


一日が終わって、布団に入る。
今日起こったことを思い返して、
今日もボクは、今日のボクの葬式をする。
それなりに自分らしくいることは、一部自分の言動を意識から切り離すわけで、
―気をつけていても人の気に障ることを言ってしまうのに―
ボクの周りにはあんまり人がいないし、これからもほんのり減っていくと思う。
木根くんはいつまで絡んでくれるだろう。
はれるさんはいつまでボクを気にしてくれるのだろう。
二人のことを考えると、明日からちゃんとしたボクでいなくてはいけないと思う。
だけどそれはできないだろう。
ちゃんとしたボクを、二人が好きでいてくれる保障も特にない。
だったら今のままで(いていいのかという不安を抱えながら)、
少しでもこの関係が続けばいいなと、
いちばんボクが楽なボクで、多分ボクらしいボクで、生きていこうと決意する。

流れ星は光りながら落ちていく。


それがいいとかわるいとか、ボクが決めることではないのだ。


(おしまい)

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Tag : 妄想

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